変異ウィルスに対する報道とは異なる分子生物学的考察

現在、報道でよく言われる変異ウィルス、これは、スパイクタンパクと呼ばれるほぼ1万あるアミノ酸構造のうち1278からなるアミノ酸構造で人体の組織特にに舌や咽頭に多く存在するACE2レセプターに付着してウィルスの人体侵入に大きく関わる部分の変異を意味します。特にこの内このうち440番目から511番目のアミノ酸領域をRBM(レセプターバインディングモチーフ)と呼び,所謂N501Y(イギリス型)の”N”はアミノ酸501番目アスパラギン酸が”Y”

が意味するアミノ酸”チロシン”に置換したものです。図3参照 このスパイク構造は人体の”ACE2”と呼ばれる受容体に高度に適合するようデザインされいますので、変異を通じ確実にその機能は減弱することとなります。変異ウィルスは、アミノ酸構造一つ一つは3の遺伝子つまり塩基で暗号化されておりアスパラギン酸は”UAC”チロ人シンは”AAC"なので比較すると、本来”U”の遺伝子が”A”に置換したことになります。ここで注意が必要なのは、このRBM領域というのは、機能的に、人体への付着侵入という機能を果たしているものの、SARS系のウィルスに共通のTリンパ球のダウンレギュレートつまり免疫機能低下を司る領域とは無関係という事です。つまり”重症化”

の根拠にならないという事です。写真1のスパイク領域のアミノ酸オレンジ線RBM 緑線FCS

アミノ酸の構造図のうち緑の部分がFCS領域と呼ばれ人体の付着を強固にしてかつORF1領域の免疫能を下げる機能を助けるがある領域で概ね660から690番目のアミノ酸領域に存在しております。

残念ながらこの領域の変異が調べられておりません。

写真2 コロナウィルスのドメイン構成とコウモリコロナの相同性 

写真3 巧妙にデザインされたウィルススパイクとそれが付着する人体受容体(ACE2レセプター):Dr.Yan L Meng論文より 

またそもそも主たる人体の免疫機能を抑制するウィルス遺伝子は残念ながらスパイク領域ではなく

ORF1a,ORF1Bという構造の一番上流域に存在してます。図2)この領域のアミノ酸配列だけでウィルス全体の3分の2の領域を占めています。スパイク領域501近辺の変異を見ても、毒性の変化は評価のしようが有りません。その一方でもう少し下流の前述FCS領域アミノ酸680から700番目付近に変異が見込めれば、ウィルスの肝心の毒性は、間違いなく下がるもしくは、新型コロナ特有のキャラクターが見事に失われ、感染しても重篤化しないということになります。またPCR検査に用いる検査領域にはORF1a領域のわずか一部、またORF1bに至っては、検査検出に用いるプライマーの設定すらなく、この領域の変異の過程が正しくトラッキキングされていない現状です。

つまり変異という事象は確実にウィルスの機能の消失を伴うものであり、事実、SARSもMARSも全く同じRNAウィルスで同じ運命を辿った。本来であれば、弱毒化することを意味するものである。しかしながら不思議な事に誰もその方向の過程を追っていない。つまり報道や専門家と言われる感染症学者は、根拠を正しく理解しないままその事象を捉えている可能性があります。

2021年4月21日 藤田

写真1

写真2

写真3